東北大学病院
東北大学病院は1817年(文化14年)に創設された仙台藩医学校を淵源としており、明治に入り廃藩置県により仙台藩医学校が廃止され、仙台公立病院、県立宮城病院へと変遷を辿る。節目となる1915年には東北帝国大学医科大学附属医院となり、東北大学病院が誕生。
基本理念は「患者さんに優しい医療と先進医療との調和を目指した病院」
・社会の要請に応える開かれた病院
・最先端の医療技術の開発・応用・評価
・着実かつ独創的な研究の推進
・人間性豊かな医療人の養成
・患者の人間性を尊重した全人的医療と高度に専門化した先進的医療の調和
人工心肺、ECMO、人工呼吸器、血液浄化療法などの循環・呼吸・代謝に関する生命維持管理装置の操作を行っている他、補助人工心臓の管理・患者サポート、ロボット手術、カテーテル治療、高圧酸素治療などに加え、わが国で実施されている臓器移植の全てが実施できる施設として、高度な治療の最前線でチーム医療の一員として業務を行っている。
今回は、診療技術部臨床工学部門の庄内千紘(しょうない・ちひろ)技士長と、鈴木雄太(すずき・ゆうた)副技士長にお話を伺った。
鈴木雄太 副技士長に聞いてみた
鈴木副技士長
臨床工学技士を知ったきっかけ
通っていた高校では、理系選択の選択が細分化されていて、理系生物系を重視したコースがあり、医療系に進学しようと決めていました。加えて機械工学が好きだったこともあり、臨床工学技士養成校の資料を取り寄せました。
資料の中には手術室、集中治療室や救命救急センターなど、治療の最前線に関わる職種であることが記載されていました。『病める患者さんの側で生命を支える機器を操作する職業』という部分が決定打となり進路を決めました。また、今思えば祖父がペースメーカーをつけていたのも、当時の私が医療に興味を持つきっかけになっていたのかも知れません。
入職した動機・経緯
東北大学病院は2つ目の施設になります。1つ目は弘前大学医学部附属病院でした。弘前大学では様々な業務に精通している先輩方から、臨床工学技士が経験する業務分野について幅広く学ぶ機会をいただきました。大変感謝しています。
数年後、学生の頃に臨床実習でお世話になった東北大学病院へ転職しました。東北大学は植込型補助人工心臓、心臓移植や肺移植などにも携われる病院です。補助人工心臓業務は植込手術、患者機器操作トレーニング、患者さんのご自宅に出向いて、電源確保やバリアフリーなど、ご自宅の環境整備まで関わりますので、非常にやりがいがあります。
副技士長ですが、マネジメントだけではなく、心臓血管外科をメインとして、人工心肺や補助人工心臓は今でも臨床に入っています。
鈴木副技士長の一日の流れ
定時 7:30~16:15、8:00~16:45、8:30~17:15
8:00 麻酔器始業点検と手術機器の配置、朝ミーティングを終え現場に入ります。
8:15 心臓血管外科の手術、補助人工心臓の外来など、その日によって業務が変わります。部下に任せる場合は、勤務表作成、配置表作成、教育計画立案、会議議事作成、医療安全、感染管理、各会議出席などの管理業務をしています。
12:00 全部門員が必ず1時間の休憩を取得できるように調整しています。施設内にコンビニ、パン屋、カフェ3か所、売店3か所、食堂3か所、キッチンカー出店2回/週などがあります。
16:45 終業。
16:45 以降の業務については、自宅待機当番を配置していて必要時に各部署からオンコールがあります。
残業は月に20~30時間です。研修やミーティング・カンファなどの残業も認めていますので、サービス残業というのはありません。告示研修のオンライン受講も、月に10時間まで残業申請を認めています。
庄内千紘 技士長に聞いてみた
庄内技士長
資格取得の援助
可能な限り積極的に援助しています。やはり費用には限りがあるので、病院の施設認定に関わる体外循環技術認定士、人工心臓管理技術認定士、アフェレシス学会認定技士などの取得・更新に関しては優先的に援助しています。それ以外の資格に関しても、主任会議でその資格の貢献度や妥当性を十分に議論し、公平性や透明性を確保した上で部門員に還元しています。
自己研鑽という意味では学位取得に関してもフォローしています。私も鈴木副技士長も医学修士を取得させていただきましたし、現在在学中の部門員もいます。あくまでも自己研鑽としての扱いですが、資格や学位の取得における経緯で得る見識や人脈は必ず臨床にも活きてくると考えています。
臨床工学技士の広報活動と確立したい養成校との臨床教育
すでに近隣大学と当院で、教育等に関する協定を結びました。このプロジェクトは学生の臨床に対するイメージを具体化させて、将来の目標設定や就職先の選定をサポートすることを目的としています。
2022年10~12月に、臨床実習前の大学3年生に見学に来てもらい、一定の効果を実感しました。先輩が後輩に業務を教える姿など現場をみて「私も出来るかも知れない」「今一つ病院で働くというイメージが湧かなかったが、臨床工学技士として働きたいというモチベーションになった」などと、学校側からフィードバックをいただきました。
こういった体験は養成校の学生だけでなく、高校生や義務教育過程においても重要だと思います。診療には色々な職種が関わることを知ってもらいたいです。その中から臨床工学技士を選んでもらえるような環境づくりを、私は実行したいと考えています。是非、気軽に病院見学にいらしてください。
オープンキャンパスがあれば、私たちが行きます。宮城県臨床工学技士会の活動もしているので、臨床工学技士を知ってもらえるような病院見学の企画をしようかと思っています。学校の勉強だけではなく、臨床とリンクして学べる環境を作って行きたいと言うのが、私がやっていきたい教育です。
残念ながら、東北大学には臨床工学科というような学科はありません。臨床工学技士の普及というのも我々の重要なミッションと認識してますので、対象は高校生でも中学生でも、その親御さんでも構いません。開かれた部門であることを意識していますので、気兼ねなく見学に来て頂ければと思います。
入職者研修について
入職して最初の1日は診療技術部研修をします。部門配属後、1か月ほどは病院に慣れることや、部門員みんなに顔を覚えてもらう目的で、状況に応じて様々なところに顔を出してもらいます。
その後、各分野に配属し、アドバイザーを任命し、本格的に業務を習得してもらいます。一般的なプリセプター制度は、上司が決めたプリセプターが教育係になりますが、当院のアドバイザー制度は、話しやすさとか、相談しやすさとかで、新人さんに決めてもらいます。
コロナ前であれば可愛がってくれる先輩が飲みに連れて行って気兼ねなく相談できる機会がありましたが、コロナ禍での新人さんは、そういったことも禁じられ、ただでさえ不安な新社会人に、友達や家族と会うことが制限される厳しい状況でした。この状況を打破するためには、新しい形のメンターが必要だと感じました。業務やキャリアプランだけでなく、日常のささいな悩みや仕事以外のことも相談にのってもらうようにしています。
業務について
分野1の人が来週は、分野4の業務をやったりします。分野わけはしていますが、業務改善やマニュアル作成などは、その分野の人が主導となって取り組むというだけで、臨床業務としては一通り行います。
ECMOなどの補助循環業務、呼吸器業務、人工心肺のサブが出来たら当直、オンコールに入ります。早い人は2年目で当直に入ります。ECMOなどは、強化期間を設け、症例が来たら、集中的に触れさせ、短期間で習得させるような工夫もします。
スペシャリストかジェネラリストかという論点は、臨床だけが業務ではなくて、医療安全、災害医療、学生実習などの領域も含めて、何個か極めてもらいたいと思っています。臨床業務で「透析できます、カテできます、人工心肺できます」も重要ですが、それに加えて、「災害医療やります、学生実習やります、医療安全やります」というように、診療から一歩超えたところも業務として求めています。
【分野1】病棟、光学診療
【分野2】体外循環、補助人工心臓
【分野3】急性期、中央診療
【分野4】血液浄化、輸血細胞治療
【その他】医療安全、院内感染管理、実習・教育、災害医療、医療情報、学会活動等
研究について
部門や個人でやる研究もありますし、産学連携として「学術指導契約」や、診療科の「治験」「臨床研究」に参加することもあります。部門・個人で研究することも大事ですが、当院にはそれを生業とした優秀な先生方が多数在籍しておりますので、病院のミッションとしての研究に対して、十分理解し、データ収集や研究に係る医療機器の整備などで部門が貢献することも重要だと認識しております。
福利厚生について
当部門には、子育て世代が多いのですが、産休・育休はもちろんあります。育休の復帰も、3年間は籍を置いたまま休めます。子の看護休暇では未就学児1名に対し各5日間の休暇が付与されます。有休取得の際はその理由などは求めません。ご家族が急に体調を崩して、ということも多々ありますので、当日の申請にも対応しています。
自由に有休を使える環境ですが、勤務表は3か月先まで出すことで、皆、自然と助け合い、残った部門員への負担やしわ寄せも少ないと思います。今のところ、希望休暇日は100%通しています。
最近では、新型コロナ対応で疲弊する医療従事者を慰労するということで、地元企業からかまぼこやマックポテトのクーポンなどの支援をいただきました。
また院内保育園として「星の子保育園」があります。こちらは第42代東北大学病院長・第21代東北大学総長の里見 進先生と深い親交のあった故吉村しげを様より、医療や医学教育・研究の発展へ活用してほしいというご遺志のもと、ご自身が長らく過ごされた地をご遺贈いただき、整備・拡充されました。地元・地域に支えられている病院だということを改めて実感しています。院内には病児保育も設置しており、発熱も38.9度以下であれば、預けて職務にあたれますので、非常に助かっています。
部門としては、技士室、休憩室などの環境クオリティも重視しています。一人ずつデスクもありますが、仕事柄、外の景色に触れることも少ないので、床を張り替えたり、観葉植物を置いたり、素人なりに工夫しています。お世辞かもしれませんが、見学に来る学生からは好評です。
東北大学病院で欲しい人材
部門理念として「安全第一」「温和丁寧」「一致団結」「迅速果敢」「不撓不屈」を掲げています。
そのため、上記の振る舞いに加えて、チームワーク、協調性、規律性は重要視しています。
部門およそ30人で、多職種・多診療科と連携しますのでコミュニケーションスキルを持っていると活躍しやすいと思います。
繰り返しになりますが、診療に従事して、どう発展させるか、何を生み出したいかだと考えています。
業務のところでもお話しましたが、当院は大学病院という教育機関でもあり、災害拠点病院、特定機能病院、臨床研究中核病院など役割は多岐にわたります。その中で診療業務に追われるだけでなく、自分なりに活躍できるフィールドを見出せる方は楽しく仕事ができると思います。とは言っても、新人さんの面談では、そういうレベルの人はいませんが、Web面談でも「笑顔や表情、楽しい人、ポジティブな人」と言うのは伝わります。極論、みんなどうせ一緒に仕事するなら楽しい人としたいですよね笑。もしかすると家族より長い時間を過ごすことになりますから。
仕事以外の趣味やコミュニティも重要です。運動でも旅行でも。習い事でも草野球でも。プライベートで夢中になれることがあるというのも重要だと考えています。
また、我々はコロナ禍でIT/Webのスキルも研鑽を重ね、職能団体や学会、医局主催のセミナーでは自前でウェビナーを開催した経験があります。
逆境をポジティブに変換し、スキルアップにつなげる、当部門らしい事例だと思っています。様々な経験や体験をある意味、福利厚生と捉えてくれるような、前向きな人をお待ちしております。
東北大学病院ウェブマガジン「iNDEX」
院内業務のオープンに、透明化をアピールするのに、SNSやラジオやTV、WEBマガジンなどを使ってアウトプットしています。
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