【臨床工学技士インタビュー】奈良県立医科大学附属病院発 麻酔科医不足対策の麻酔アシスタント業務は呼吸代謝循環の全てが学べる業務

奈良県立医科大学附属病院

奈良県における唯一の特定機能病院で、病床数992床、職員数2686人、1日平均外来患者数2257人であり、以下の使命を持っています。

1.「安全で質の高い先進の医療を提供する。」
2.「患者さんと心が通じ合う人間味あふれる医療人を育成する。」

高度救命救急センター、ER救急、第一種・第二種感染症指定医療機関、エイズ中核拠点病院、精神科救急医療施設、都道府県がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センター等の指定を受け、高度、先進医療を担う基幹病院として診療・教育・研究の充実を図り、奈良県医療の最終ディフェンスラインとしての機能を果たしています。

特に高精度放射線治療やIVR(画像下治療)、ロボット手術、精密治療としての薬物療法を含めて、質の高いがんゲノム医療を実施する体制を推進するとともに、脳卒中、心筋梗塞、大動脈解離・急性腹症・精神疾患・感染症をはじめとするあらゆる疾患に高度で先進的な医療を開発・提供できる体制づくりを強化し、また基幹災害拠点病院として、災害医療にも万全の体制を整えています。

昨今の慢性的な医療従事者の不足、地域偏在、高齢化社会と医療費の高騰を受け、地域医療構想の実現に向けて、医療機関の緊密な連携・機能分担が求められており、当院は「断らない」拠点病院として、多くの紹介患者さんを受け入れ、急性期治療後は紹介元の医療機関あるいは別の機能を有する病院や診療所への逆紹介を行い、医療機関の機能分化と地域完結型医療の推進に努めています。

臨床工学部門を統括する医療技術センター副技師長小西康司(こにし・こうじ)技師と臨床工学3係主査で麻酔アシスタント部門リーダーの山中浩太郎(やまなか・こうたろう)技師にお話を伺いました。

山中浩太郎 技師 に聞いてみた

臨床工学3係主査 麻酔アシスタント部門リーダー 山中技師

臨床工学技士を目指したきっかけ

医療職に興味がありました。高校生の頃に理学療法士なりたくて、理学療法士になる学部を探している時に、機械を使った治療が出来る資格がある事を知りました。

当初はリハビリをやりたいと思っていたのですが、臨床工学技士の業務の方が、結果が分かりやすい点に興味を持ち臨床工学技士を目指しました。

人工心肺で手術中に立ち会える業務もあると知り、心臓を止めたり、バイタル管理をしたり、臨床に携われる魅力的な仕事だと思いました。

入職のきっかけ

就職を機に独り暮らしをしたいと県外の病院の就職を希望していました。特に「これをやりたい」という固執はなくて、幅広く業務が修得できる病院を志望していたところ、大学の先生に紹介いただいたのがきっかけで見学に来て、色々な業務の出来る良い病院だと思って奈良県立医科大学附属病院に決めました。

現在のメイン業務は麻酔アシスタントで、土日などは透析業務も携わっております。

麻酔アシスタントの具体的業務

山中技師山中技師

・担当する麻酔科医と前日までに症例のミーティングをして使用する薬剤(鎮痛剤・鎮静剤等)や術式、基礎疾患による術中の注意点などの確認を行います。
・術前麻酔器の始業点検や薬剤、挿管チューブの準備をします。
・術中は麻酔科医と術中管理補助をして、バイタルに変化があった場合は、即座迅速に麻酔科医の指示の下、動けるような仕事をしております。

挿管などの医療行為は、麻酔科医の仕事になりますが、必要なものを手渡すなどの介助業務をします。麻酔科医がどのような施術をするかというのを理解していないと、麻酔科医が手術に集中出来ないので、どのような手順で、医療行為を行うか手順は理解把握することが必要です。

 

小西副技師長小西副技師長

なぜ麻酔アシスタント業務を始めたかについては、元々麻酔科の教授で、麻酔科学会の理事をされていた病院長がおりました。麻酔科医の不足を解消するために、何の職種に担当させるかということで、元々色々な業務に当たっていた臨床工学技士が最適ということで臨床工学技士が担当させていただいています。

麻酔科医が一人で麻酔業務に当たると、患者さんの変化、急変だとか、業務が過密化します。麻酔科医は術中、患者さんに集中していますので、臨床工学技士が入りもう一つの目として術中管理補助をすることによって、安全性の高い手術を提供できるというのが、麻酔アシスタント導入のメリットです。

患者さんが多ければ、手術室の入替え等の進行面でも時間の短縮になります。麻酔科医2人で麻酔に当たることは麻酔科医不足の中では困難です。病院としては、臨床工学技士に麻酔アシスタントをさせる方が安全性を確保しながら経済的メリットは大きいかと思います。

麻酔アシスタントのやりがい

医療技術センターには38名の臨床工学技士が所属していますが、麻酔アシスタント業務自体は14年目で、22歳~30代半ばの13名で担当している部門になります。

なかにはバイタルが急変する症例があるのですが、麻酔科医に指示されてから行動するのではなくて、麻酔科医が指示した時には、「既に準備できています」という状態を作れていると、事前に重症化を防げますので、麻酔科医と意思疎通が取れている時にやりがいを感じます。

また麻酔を専門として大学院に進学させていただき、麻酔科学会でも何度か発表をさせていただいております。常にドクターから学ぶ環境があります。

麻酔アシスタント業務を学ぶこと

 

山中技師山中技師

医療で必要と言われる呼吸・循環・代謝全てを学べる業務です。術中の患者さんは呼吸器での呼吸管理をしますし、薬剤を使用すると交感神経が抑制されてバイタルの変化、血圧の低下が起こりますので、昇圧剤を使用して循環を持ち直したりするのを見たり、出血をしたらどのように対処するか、急変時の対応を学ぶことが出来ます。

痛みは他の業務に当たる臨床工学技士は学ぶことは無いと思いますが、手術を通じてや麻酔科医から疼痛管理を学ぶことができます。こういった全般的な知識は、人工心肺や透析、内視鏡などでも必要な知識ですので、幅広い知識を学べることは麻酔アシスタント業務を担当させていただく利点だと思います。

 

forista.biz編集部forista.biz編集部

タスク・シフト/シェアに関心のある病院が多いですが、病院単位での見学は可能ですか?

 

小西副技師長小西副技師長

当院ではタスク・シフト/シェアの開始に先行して、厚労省も見学に来られています。そのため、各大学病院や民間病院からの見学依頼も多いため、麻酔科医師より麻酔科医局に連絡いただき、見学は状況により受け入れを考慮している状況です。

 

一日の業務の流れ

定時 8:30~17:15
当直(一直二勤務) 8:30~22:00(業務時間)、22:00~翌5:00(当直時間帯に呼出しがあると実働手当として残業対応)、翌5:00~翌8:30(業務時間)
残業 月間平均25時間前後 (組合規則で年間残業上限300時間未満)

7:30(1時間前残業) 麻酔器点検、薬剤準備
8:10 麻酔科カンファレンス
8:40 患者さん入室(麻酔導入介助)
複数麻酔や緊急症例があれば、術間で、次の手術の準備を行う。
抜管のお手伝いまでが業務となります。
17:15 終業

山中技師山中技師

業務習得については、1か月間はプリセプターについて業務を修得します。
2か月目からは基礎疾患のない患者さんの麻酔アシスタントを行います。
半年くらいで重症度の高い(合併症、基礎疾患のある患者さん)症例を担当出来ます。
1年で院内認定試験を受けて高度医療技術取得者として認定されます。

 

小西副技師長小西副技師長

院内認定試験は、院長、医療安全委員長、副院長、看護部長が承認した奈良県立医科大学病院の試験になります。
薬剤の作用を理解している事や、手技を覚え、300症例行う研修プログラムになっており1年の経験の後に、麻酔科指導医の試験 (学科、手技、面接)を受験出来て合格してもらいます。

 

山中技師山中技師

麻酔アシスタント業務は術中の麻酔維持管理補助をはじめとして、麻酔科医がどのような手順でどのように施術するかを理解把握した上で、先読みして準備して動けることが重要で、麻酔科医が集中してスムーズに麻酔導入が行うための介助や術中の小さな変化に気づき麻酔科医に報告することが求められます。

小西康司 副技師長 に聞いてみた

医療技術センター 小西副技師長

入職したら

第一は病院としての人員配置のバランスです。人工心肺の症例が多く、人工心肺担当者が少なければ、人工心肺に配置します。麻酔アシスタントで超過勤務が多ければ、麻酔アシスタントに配置していかないといけない状況になります。どの部門で、手が足りないか、何人必要かを常に考え、大学法人が承認する募集人員に合わせて人員を配置します。

麻酔アシスタント部門、機器管理部門、ICU業務、血液浄化部門、呼吸器部門、内視鏡部門、人工心肺部門、手術室部門の全てをローテーションするというようなことは出来ません。ただ、縦割りにすると、隣の部署で困っているのに、補助できないとバランスが悪く安全に業務ができなくなり大変なことになりますので、スペシャリストとしての業務とジェネラリストとしての業務を担当してもらって、各個人2~4業務が出来るようにしています。

採用試験の時には、どこに人員が必要か分かっていますが、どの業務でも頑張っていただくことを前提採用試験を受けてもらいます。基本的に、どの業務でもやってくれる人を採用しています。
例えば、血液浄化で人が足りなければ、まずは血液浄化を覚えてもらって、希望のある業務や、覚えてもらいたい業務をジェネラリスト業務として覚えてもらいます。

手術室、中央材料室、IVR(画像下治療)、内視鏡、麻酔アシスタント、医療機器管理各部門にリーダーを設けています。

山中主査のように麻酔アシスタントのリーダーでありながら、透析が出来るというような感じで、メイン含めて2~4業務が出来るようになります。無理にすべての業務をやらせても、医療の質と安全性を担保するのは難しいと思います。人によって2業務担当できるのか、4業務出来るのかというのは変わります。

家で待機しながら緊急時に対応してもらうオンコールは5名います。
(人工心肺2名、内視鏡1名、手術1名、IVR1名)

これに当直1名、麻酔アシスタント当直、夜勤1名で24時間体制で緊急対応しています。

当直に入るには、3つ4つ業務が出来るようにならないと難しいと思います。最低限、機器管理、呼吸器、透析が出来ないと当直は難しいので、だいたい3年目から当直に入れるか検討します。

1年目から人工心肺を担当している人は当直に入れなくても、オンコール要因としては成立していますので、当直は入れなくてもオンコールは持てるようになります。

現在時点でいえば、業務によってオンコールの回数に差があり、人工心肺と麻酔アシスタントが大変になっているので、そちらに充足していくような募集をしていきます。

教育支援について

麻酔科の医師が臨床工学技士の進学には積極的で、麻酔アシスタント在籍13名中7名が奈良県立医科大学で修士などの大学院に進学・卒業している状況です。循環器内科、心臓外科でも受け入れしてもらっていますので、全部で13名の臨床工学技士が進学・卒業しています。

臨床工学技士法の改定に伴う告示研修は全額負担、認定士、学会発表は出張費を一部補填していますが施設基準など必要に駆られる資格が優先順位は高くなります。コロナ前は学会(セミナー・勉強会含め)参加が500件ほどありました。500件となると全ての費用は出せませんので、一部支援となります。

学会発表などは臨床工学係で年間50件ほどあります。座長やシンポジウムの依頼など各団体からの要請に対しても断ることなく対応しています。

採用したい人物像

試験は、専門試験、小論文、面接です。

特にみているところは、
・自分で考え行動する「積極性と自発性」
・「医療者」になる上での人に対する配慮・思いやり
・多職種連携するので受け答えの出来る「コミュニケーションスキル」

採用面接は人事やほかの職種の方も質問します。3人で15分間しかありませんので、是非アピールするという意味合いでも病院見学に来て欲しいと思っています。どういう考え方を持っているのか、しっかりとしたコミュニケーションがとれるのかどうかなど分かると良いです。

真面目に何かに取り組んでいるとか、履歴書だけではわからない部分もあるかと思いますけど、面接だけのうわべでは分かりにくい、病院見学に来ていただくと誠実性の見える言葉も出てくると思うんですよね。

forista.biz編集部forista.biz編集部

どのような発言があると採用したいと思いますか?

 

業務を確実にすることは当たり前のことで、プラス、成長するにあたって患者さんに水準の高い、安全性を確保した医療を提供するために研究や学会に触れるような発言があるといいと思います。

学会発表していきますよ。勉強していきますよ。という姿勢の人材は良いと思います。

病院と一緒に成長できる学生さんを採用していきたいと思います。

 

取材協力

奈良県立医科大学附属病院 医療技術センター
〒634-8522 奈良県橿原市四条町840 Tel.0744-22-3051
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