【臨床工学技士インタビュー】福利厚生も充実する東京都立豊島病院は、救急医療を強化し業務拡大中

東京都立豊島病院

豊島病院は、明治31年(1898年)に東京都板橋区で伝染病病院として設立された病院です。所在地が北豊島郡にあったことから、豊島病院の名前がついています。

2022年7月に、豊島病院は独法化され、東京都立豊島病院となりました。東京都の公社6病院と1センタ-、そして都立8病院が一つの医療グループとして、地方独立行政法人東京都立病院機構が設立されたのです。豊島病院はこの独法機構の一病院として位置づけられます。

今後の超高齢化社会における疾病構造の変化と医療福祉機構の構造変化に対応し、また今回のcovid-19のような医療においても確実に機動的な対応ができる組織を目指してゆきます。

公社から地方独立行政法人となりましたが、基軸となる医療姿勢は変わりません。
「医療で地域を支える」確実、安全な「オーソドックスな診療」が豊島の目指すところです。

さて、豊島病院はこの3年に及ぶcovid-19蔓延において約4,500名の入院患者さんを治療いたしました。感染第5波、医療崩壊寸前の2021年8月から9月の3週間には、東京都で最も多い183名の患者さんを受け入れました。また、2022年1月の第6波においては、都内の1割強の入院患者さんを豊島が受け入れを行いました。

他の医療機関で受け入れが困難であった重症中等症、精神疾患合併、妊婦、小児,透析患者、認知症合併、社会的生活困難を抱えた患者さんにも、多く対応いたしました。感染状況の変化に、適切なスピード感をもって私たちは対応し、地域社会を支えてきたと自負しています。

そうした中でも、一般診療、救急医療について可能なすべての対応を行ってきました。120年を超える豊島病院の歴史でありますが、新規開院後23年間の「医療で地域を支える」といった理念は、今回の独法化によってさらに強いものとなります。この独法化に向けて豊島病院では医療設備の更新、病棟の改修を行ってきました。

2020年度は
① 透析室の刷新 ② 内視鏡室拡大(検査室6ブース) ③ 手術支援ロボット(センハンス)の導入
④ 放射線科256列revolution CTの導入、IMRT開始 ⑤ 病院救急車の導入 など

2021年度は
① 新型血管撮影装置の導入 ② 手術ロボットダビンチの導入 ③ 築23年を経た病棟の改修
④ 中庭パテイオの改修 ⑤ 緩和ケア病棟の全面改修 ⑥ 土曜・日曜リハビリ体制の構築 など

こうした設備投資の下、今後は「消化器救急24時間(吐下血、腸閉塞、黄疸、腹膜炎)」と、「救急医療(CCU NET、脳卒中、整形)」を強力に進めてゆきます。急性期診療を、2025年から2040年の超高齢化社会に向けて整備し、高齢化社会だからこそ増加する、内科疾患に十分な対応を目指します。 多職種連係、リハビリシステムの構築、看護だけでなく介護体制の構築も行います。

独法化による自由度の高い医業運営上と、責任のある経営を作ってゆきます。病気で困った人たちの為に、患者さんから、そして家族から「豊島病院がここにあってよかった。」 と感じてもらえるような病院になることを目標にします。

 

今回は手術室業務の拡大、心カテの開始など業務拡大に努める検査科臨床工学係長の鹿野直幸(しかの・なおゆき)技士と、主任の水野一貴(みずの・かずき)技士にお話を伺いました。

検査科臨床工学主任 水野技師(左)・検査科臨床工学係長 鹿野技士(右)

水野主任に聞いてみた

臨床工学技士になったきっかけ

両親は医療従事者です。私は物理が好きで、機械メーカーに就職して設計をしたいと思って進学しました。入学時、臨床工学技士の業務は機械点検をする仕事というイメージを持っていました。入学後に、血液浄化など、臨床業務に携われるのを知りました。

就職活動の段階で、医療現場で機械のノウハウが生かせるので、メーカーよりも病院の臨床業務の方に興味を持ち、病院に就職する道を選びました。

入職動機

1つ目の就職先選びは、特に何の業務がやりたいというのが無かったので、近くで働ける透析クリニックに就職しました。ですが、働く中で臨床工学技士なのに携わる業務が透析だけなのは違う感じがしてきて、他の業務も覚えたいと思い転職活動をしました。

東京都立病院機構が2つ目の就職先になるのですが、都立の各14病院(入職当時は6病院)でそれぞれ違う業務があり、異動届を出せば転職することなく、希望配置が出来るということであったため、色々な業務に就けると思い入職しました。

現在は、血液浄化に加え、中央機器管理業務や手術室業務(da Vinci業務、腹腔鏡手術業務、麻酔器点検など)などの業務を担当しています。

一日の流れ

定時 8:30~17:15(休憩1時間)

8:30 手術室、透析室、中央機器管理室各部門で朝礼
8:30 手術室の場合(麻酔器・内視鏡・腹腔鏡など点検、内視鏡業務や腹腔鏡業務)
9:00 患者さん入室(申送り等)
9:30 手術開始(多い症例は、ヘルニア、胆嚢摘出など)
11:00~13:00 1時間休憩
手術が無い場合、透析業務やトラブル対応、中央機器管理業務
17:15 終業

緊急搬送が無ければ、残業はほぼ無し。
透析は2クールある日も、3時間と4時間を上手く組んで、時間外を出さないようにしています。
オンコールは無いですが、電話当番はあります。ただ病院に行かないといけないようなことは、去年度もほとんどありませんでした。

やりがい

徐々に業務が増えていて、各業務を確立していくこと。手術室で自分たちが出来るところを業務にして業務を増やしていくこと。個人的に機械は詳しいので、スムーズなトラブル解決が出来ること。

透析室業務では、患者さんと関わりますので、感謝されたりするのもやりがいに思います。

透析技術認定士は取得していますが、今はまだ何の分野とは決め切れていません。今後は分野を決めて専門認定士を取りたいと思っています。

鹿野係長に聞いてみた

入職後の研修について

病院のオリエンテーションが3日ほどあります。そこで感染、医療安全、電カルなど病院の決まり事を学びます。その後は配置となります。毎週土曜日、透析業務は1名勤務となりますので、まずは透析を学びます。

・透析がどういう仕組みになっているのか理解する。
・患者さん、医師、看護師と現場と仲良くコミュニケーションを図れるようになる。
・トラブル対応、回路交換が出来るようになる。

以上が出来るのに経験者で1か月、新人さんで3か月くらいかかります。

7月からは土曜日の勤務に入ってもらいます。今いる5人は全員透析経験のある転職組なので穿刺は出来ますが、ドクターが穿刺しますので、1人で勤務に入れます。新人さんだと、半年~1年くらいかけて穿刺を覚えてもらいます。

10月くらいからは、手術室業務に入ってもらいます。手術室業務は1人なので、ある程度機器トラブルなども想定して入れるようになってもらいます。中央機器管理業務は、2クール目の透析のない火曜と木曜に入ってもらいますので、同時並行で覚えて行きます。

臨床工学技士24時間365日体制で対応したいので、現在の5名+心臓カテーテル業務の2名と、2交代で「入り明け休み」で、あと3名で10名体制にしたいと思っています。上層部にはそれだけの仕事があるのか?と言われますが、事務長は病院畑の方なので、理解を示してくれていて、豊島病院が生き残る為に必要な体制作りであることを理解いただけるように活動しています。

都立病院機構の臨床工学部門として

都立病院機構では14病院で、人材育成が重要だというのは各係長で一致した考え方ですので、マニュアル作成、教育ラダーなどを構築しています。

その上で、臨床工学技士の資格で、色々な業務、病院を経験して行きます。まだ2023年4月から公社と都立が一緒になったばかりなので異動はないのですが、埼玉県立3病院検査科では、同じ機器を使っているので、異動に際しても、新しいものを使って覚える必要が無いので効率的だというような話も聞いています。ですので、そういった環境も今後考えて行かないといけないかなと思います。

教育支援制度について

教育面では、都立病院機構一律の支援になりますで、告示研修も認定士取得も機構が援助してくれます。学会に行きたいと言えば、科の予算で行ってもらうことが可能です。

ただ豊島病院はオードソックスな診療として地域の病院の役割ですので、余り論文を書く題材が無いかも知れません。

ですが、業務は拡大傾向にあります。新しい臨床業務を始める機会に立ち会えますので、ゼロベースからの業務立上げなどは経験できます。

福利厚生について

夏季休暇は5日間あって、年末年始も12月29日~1月3日まで休みがあります。透析がありますので、それぞれ1~2日出勤しますが、年休(有休休暇)20日は取れますし、お子さんがいれば小学校卒業するまで看護休暇を一子に付き5日付与されます。

水野さんは2人お子さんがいるので、季節休暇のほかに、年休20日と看護休暇10日で30日は休んでいただけています。都立病院機構の中でも時間が規則的で、休みが取りやすい環境です。

採用について

採用については、東京都立病院機構に就職することになります。14病院ありますので、配属病院の希望を取り、希望と各病院の状況により配属病院が決定されます。

採用試験は、筆記(専門試験)、小論文、面接の採用試験になります。

 

取材協力

東京都立豊島病院
〒173-0015 東京都板橋区栄町33−1 Tel.03-5375-1234