【臨床工学技士インタビュー】大学病院ならではの臨床を経験したいやる気、向上心のある学生さん大歓迎!自治医科大学附属病院

自治医科大学附属病院

1974年の開院以来、自治医科大学附属病院は栃木県の基幹病院として地域医療の要としての役割を果たしつつ、安全で質の高い医療を提供してまいりました。

栃木県内だけではなく茨城県西部、埼玉県北部を含む広い医療圏と連携体制を構築しています。

病床数、手術件数などは大学病院・特定機能病院として全国トップクラスの規模であり、小児病院としての「とちぎ子ども医療センター」を併設しているのが大きな特徴の一つです。

災害医療、がん診療連携、がんゲノム連携、小児がん連携、エイズ、肝疾患診療連携、難病診療連携、てんかん診療、治験などさまざまな領域で国や栃木県の拠点指定を受けています。

また医療安全管理には特に力を入れており、高難度新規医療技術(本院における最初の手術など)のチェック体制や最近では新型コロナウィルス対策など、病院全体として機能的に取り組んでおりますので、安心してご受診いただければと存じます。

 

今回は病床数1,132床、診療科47科の医療機器の管理と2,000点を超える中央管理を行う臨床工学部の木村好文(きむら・よしふみ)技師長にお話をお伺いしました。

木村技師長が臨床工学技士を知ったきっかけ

臨床工学部 木村技師長

医療職に興味がありました。放射線技師や薬剤師は知っていましたが、臨床工学技士という新しい臨床に携われる医療職で、人工心肺等の臨床にも携われるという事で臨床工学技士を選びました。

進学は大学で専攻科が無かった時代ですので、専門学校へ進学しました。

自治医科大学附属病院を選んだ志望動機

実習が大学病院でしたので、人工心肺、心臓カテーテル検査や救急にも臨床工学技士が配置されていて一様に業務を見ることが出来たので、興味を持てました。実習は短い期間ですが、その期間で何をしたいかというのが分かってきますので、実習病院に恵まれたと思います。

透析も、維持透析だけを見て血液浄化業務というと興味を持ちにくいかも知れないですが、末梢血幹細胞採取や腎移植に対する特殊透析とかもありますので、様々な業務のある病院で見学をすると視野が広がりますね。

就活にあたっては、人工心肺、心カテ、呼吸に興味を持っていました。私の時代は、透析業務で募集する病院が多くて、病院に臨床工学部が存在する病院は多くありませんでした。今みたいに、インターネットが無かった時代なので、自分で調べることも出来ないですし、求人媒体もなかったので、求人は学校に来る分だけでした。

1年目から希望した人工心肺を担当させてもらって何かと縁を感じています。

木村技師長の日常業務

臨床に入るのは副技師長までで、人材が育ってきているので、ほぼほぼ臨床に入ることが少なくなりました。管理、教育、人事業務や医療安全が主な仕事です。

多職種で行う医療安全のカンファ(QSセンター)や委員会、QSマネージャー会議と医療安全に対して臨床工学技士は医療機器安全管理を専門に担当しています。

各専門分野によって、
・安全推進部門(インシデント報告の収集・分析、有害事象の原因究明、医療安全管理指針・各種マニュアルの整備、院内巡視による確認・指導など)
・質向上・臨床倫理部門(高難度新規医療技術及び特定診療に関する審査・モニタリング、臨床倫理への対応など)
・渉外担当部門(有害事象・訴訟への対応など)
・医薬品・医療機器安全管理部門(未承認新規医薬品・医療機器、適応外医療機器に関する評価・モニタリング・監査への対応など)
が設置されています。

それぞれ専従、専任、兼務スタッフ及び各部門のQSマネージャーと連携して、医療の質と安全を高める取り組みを行っています。

機器管理体制について

病院で購入している医療機器は約16,000点を超え、中央管理は2,000点を超えます。

医療機器は各部署を横断して管理していくかと思いますが、当院の場合は、用度課、臨床工学技士と連携し情報共有を行っています。

大学病院ですので、病院の予算の他、研究費があります。購入情報を共有して、研修等も行います。通常の機器研修は、定期研修のほか、新規導入や部署要望があれば、研修を行います。

特定機能病院は、別途、厚労省の求める機器管理があります。特に安全使用に際して技術の習熟が必要と考えられる医療機器に関しての研修(※)を年2回程度、定期的に行い、その実施内容について記録します。

(※)特に安全使用に際して技術の習熟が必要と考えられる医療機器には次に掲げる医療機器が含まれること。
①人工心肺装置及び補助循環装置 ②人工呼吸器 ③血液浄化装置 ④除細動装置(自動体外式除細動器(AED)を除く)⑤閉鎖式保育器 ⑥診療用高エネルギー放射線発生装置(直線加速器等) ⑦診療用粒子線照射装置 ⑧診療用放射線照射装置(ガンマナイフ等)

併設している「とちぎ子ども医療センター」では、子どもの心臓のオペや呼吸器管理なども当部署の業務になっています。

自治医科大学附属病院の臨床工学技士業務

定時 8:15~17:00(45分休憩)
残業 20時間前後(季節、部門によっては40時間程度)
日当直 8:15~17:00(日勤)、17:00~翌8:15(管理当直)
(プライミング等、宅直到着までの準備業務)
宅直 日々4名(人工心肺2名、心カテ1名、血液浄化1名)
※ECMOは、心臓血管外科のオンコールは人工心肺チーム、循環器は心カテチームが対応

8:15 各部署業務開始
体外循環、血液浄化、心カテ(虚血・植込みデバイス)、医療機器管理、不整脈の5部門に分かれています。
昼休憩 各部門で業務進捗が違うので、各部門で休憩時間が異なります。
17:00 終業

新卒研修

当院では日当直業務を行っておりますので、入職後1年間の初期研修期間で日当直に必要な知識、業務を身につけてもらいます。

当直で呼ばれるのは、機器トラブル・呼吸器トラブル対応・透析(CHDFプライミング)で呼ばれることが多いため、最初に血液浄化と機器管理を半年で学びます。

心カテ・不整脈(虚血がメインでアブレーションは業務理解)、手術室業務(人工心肺は業務の流れを理解、da Vinci業務や機器管理業務)を3か月ずつ、それぞれの業務について学んでいきます。既卒採用者は経験を考慮して研修を行います。

2~3年は半年を目安にローテーションを行い、専門性を深めて行くようになります。部署によっては宅直制をおこなっているので、2年目から宅直に乗れるよう指導、教育していきます。

最終的にはスペシャリストになっていくと思いますが、まずは、ジェネラリストとして、3年はローテーションします。

スタッフ個々でも目標がありますので、年2回の面談で希望をヒアリングしています。ただ、スペシャリストでも他の業務についての知識は必要と考えています。人工心肺をやりたいといって入ってきた人も、実際に臨床入ってみると他の業務に興味を持ったり、本人が好きだと思っていても、客観的に他の業務が向いていることもあります。

私は全ての業務を経験させていただきました。他の業務で得た知識がスペシャリスト業務にも連携しますので、業務理解が深まると思っています。透析する人は腎臓だけが悪いのではなくて、心臓が悪い人もいます。全身の理解が無いと、透析をして血圧が下がる理屈も分からないかと思います。

教育と評価について

学会参加は強制ではありませんが演題発表の推奨はしています。人にものを伝えるプレゼン能力は飛躍的に伸びますので、業務でも生きますし、やっている人とやっていない人の差は大きく出ると思います。臨床はコミュニケーションが大事ですので、そういったアウトプットをしていくことは非常に重要です。

学生実習の指導者講習や体外循環認定士など施設要件に関わる資格・講習参加は病院から支給があります。その他の認定士については、ある程度の業務経験を積むと、各自が自己研鑽で取得しています。

業務については、各部門でのスキルマップがありますので、業務習得して宅直が出来るようになったら、その業務は卒業として、少なくともサブ業務としては、業務を任せられる認識です。

 

forista.biz編集部forista.biz編集部

アブレーションは教育マニュアルを作りにくいとお聞きするのですが

 

色々な不整脈があって、それぞれのストラテジーがあります。治療方法も不整脈の種類によって決まっていますが、ドクターが違えばアプローチ方法が若干変わってくることもあります。基本的なものは教育しますが、まず経験をしていくのが一番早い習得方法だと思っています。

福利厚生等

働きやすさ、長く勤めてもらえる環境作りは意識しています。

臨床工学部は、33名(1名産休中)で、男女比は24:9です。副技師長の2名と、主任の5人のうち1名は女性です。年齢層は、20代19名、30代7名、40代5名、50代2名になっています。

病棟増設、子ども医療センターの併設、日当直で業務拡大する度に、人数が増えています。

手当は充実していますし、傷病休暇・特別休暇・育児休暇など国家公務員に準拠した休暇制度もあります。20日間有休を使っているスタッフもいます。5部門にそれぞれ主任がいますので、有休取得や宅直が出来ない日などは各部門で調整してもらっています。

働きやすい環境作りはしていますが、退職者は出ます。地元に帰るなどの理由です。

大学病院としては、先端医療に携わった優秀な臨床工学技士を全国に輩出するというのも、教育機関としての1つの側面かと思いますので、それぞれの地元で頑張って欲しいと思います。

自治医科大学附属病院のPR

当院は特定機能病院になっていて高度な医療を提供しています。そこに関われるのは恵まれていると思います。研究に関しては個人や、診療科の研究に参加するスタッフもいます。

臨床工学部は経験年数10年目以下が2/3という非常に若い組織でこれからまだ伸びて行くと思っています。タスク・シフト/シェアなどで業務拡大が進むなか大変ではありますが、やりがいのある組織だと思います。また、そうなるようにしていきたいと思います。

来て欲しい学生

やる気が大事だと思います。自ら向上心を持って行わなければ、いくら教育しても伸びて行きません。面接は緊張しているのは仕方ないとしても、自分の意見をきちんと伝えられることも重要です。

試験は一般試験と専門試験があります。面接は1回です。小論文はないです。学力は国家試験に受かりそうだというレベルは求めます。試験は机上のものであり、知識をどう生かして行けるかが重要です。

 

取材協力

自治医科大学附属病院 臨床工学部
〒329-0431 栃木県下野市薬師寺3311−1 Tel.0285-44-2111