【臨床工学技士インタビュー】人工心肺業務、人工呼吸器業務など臨床工学技士がメインとする業務が揃っている病院で、部署固定ではなくオールラウンドに業務にあたれる堺市立総合医療センター

堺市立総合医療センター

大正12年に「堺市立公民病院」として宿院町東で開院して以来100年に渡り、地域に根差した自治体病院として市民の皆さんの生命と健康を守っている。「市立堺市民病院」「市立堺病院」へと改称、南安井町への移転を経て、平成24年には、地方独立行政法人に移行し、公共性・透明性に加えて病院が自主性をもって運営できる新しい組織としてスタート。平成27年には、現在の家原寺町に移転し、堺市で初めて三次救急を担う救命救急センターを備えた新病院「地方独立行政法人 堺市立病院機構 堺市立総合医療センター」として出発した。救急救命設備を備えた総合病院の臨床工学科の副科長、杉本憲彦(すぎもと・のりひこ)技士にお話を伺った。

杉本 技士

臨床工学技士になるきかっけ

臨床工学技士になるまでは少し遠回りをしていますが、大学では生化学を勉強していました。主に納豆の研究とかをやっていましたが、父が臨床検査技師で、就職する段階になって、機械いじりが得意で、父の話を聞くうちに、先が明るい臨床工学技士の仕事がしたいと思い、専門学校に行きました。理系ですが、資格取得に必要な単位はとっていませんでしたので、専門学校で3年間学んで臨床工学技士になりました。

堺市立総合医療センターへの転職

最初に就職した病院は、人工心肺業務に従事したくて総合病院に入職しました。約5年間お世話になり、臨床ME専門認定士、透析技術認定士等の資格を取得しました。
その病院では透析の業務が無く、臨床工学技士なのに透析業務の穿刺を経験していないのはもったいないと思い、透析業務のできる病院へ転職して、透析業務と人工心肺業務を担当しました。
堺市立総合医療センターは3院目になりますが、堺市の総合病院で、人工心肺業務、人工呼吸器業務、透析業務、医療機器管理など臨床工学技士がメインとする業務が揃っている病院で、部署固定ではなくオールラウンドに業務にあたれるのが私にとっては良い環境です。また体外循環認定士の取得や、大学院に行く機会もいただけて、医療データを解析する学問である応用情報科学の修士も修得しました。

タスク・シフト/シェアについてはいかがでしょうか?

今後チャンスがあれば、ペースメーカー外来、循環器内科のアブレーションなどの分野も行っていければと思います。タスク・シフト/シェアよりは、安全性の観点から、まずは当直を2人体制にするなどマンパワーを強化したいです。

杉本副科長技士の一日の流れ(透析室)

勤務時間は8:30~17:00(残業は月間10~20時間)

8:30 朝礼(夜勤者を含めた申し送り)
8:40 透析室朝礼
9:00 患者さん入室、穿刺開始
10:00 穿刺終了、機器点検・採血・翌日準備
11:00~13:00 交替で45分休憩
14:00 返血、片付け、翌日準備
17:00 終業

新入職研修制度

教育プログラムがあって1年で当直業務に入れることを目指します。1年目は、医療機器管理業務と血液浄化業務にあたっていきます。プリセプター制度でメンタル面も含めてフォローしていきます。教える側はローテーションしますので、常に同じ人とペアになるわけではありません。業務を評価する制度がありますので、「できていない・できている」をみて、習得度合いを把握します。集中治療室のCHDFと心カテ業務が施行できるようになると当直に入ります。色々な部署から依頼がありますので、優先順位をつけて業務にあたることも重要です。広く浅く業務を覚えてもらうのが1年目になります。

2年目以降は、人工心肺装置を覚えてもらうために手術室に入ります。

3~5年目は、血液浄化業務、集中治療室業務、救命救急ICU・救急病棟業務、血管造影室業務(心カテ)、手術室業務、医療機器管理業務、人工心肺業務、補助循環業務を一通り経験してもらいます。5年あれば、全ての業務を習得できる予定のプログラムです。

オンコール勤務に就くのは、人工心肺業務が独り立ちしてからになります。業務ができる、できないで、オンコールに就く就かないというケースが生じてしまうと公平性に欠けるので、今後も可能な限り、科のみんなで人工心肺業務に従事することを目指します。人工心肺業務に現時点16名中10名が従事していますが人工心肺件数が年間50件ほどなので、私や管理者等がどんどん抜けて行って、新しい技士さんに業務を覚えてもらい、安全と技術維持の適正人数を保ちたいと思います。

女性の労働環境について

16名の技士のうち女性は1名で、現在育児休業中です。産前産後の休暇、最大3年間* 育児に集中できる育児休業はもちろんのこと、復職後は短時間勤務制度、夜勤・時間外勤務の免除制度を利用して子育てに負担がかからない働き方が可能です。また、パパ育休の制度も整備されており、母親がワンオペ育児になることもありません。さらに、妊娠中の検診や体調不良に関する休暇も充実しています。

子育て世代支援の一環として、堺市の認可保育所「ぞうさん」を併設しています。保育所は、0歳児から2歳児まで入所可能となっており、定期利用(日額2,000円)だけではなく、病児保育、夜間や休日の保育、一時的に保育が必要となった場合にも対応できる体制で運営されています。

なお、臨床工学科では、妊娠中は極力起居や移動が少ない医療機器管理業務に従事いただけるよう配慮しています。また、復職後の勤務への不安を逓減するため、休業中も最新技術の情報を得ることができるよう適宜情報発信しています。
このように、女性の技士が安心してキャリアの継続ができるワーク・ライフバランスのとれた働きやすい職場です。働きがいを実感できるよう職場環境の充実に努め、もっと女性の技士が増えることを期待しています。

*原則は1年6か月。それ以上の休業は条件による。

福利厚生について

上記の子育て支援以外にも、年次有給休暇以外に目的に関係なく年間最大5日*1 まで取得できるリフレッシュ休暇があり、仕事とプライベートを切り替え易い休暇制度が整備されています。また、単身者を対象とした職員宿舎*2 も完備、マイカー通勤*3 も可能など福利厚生は充実しています。さらに、職員厚生会があり、会員は旅行商品の購入や映画鑑賞などが会員価格で利用できる「えらべる倶楽部」に加入できます。また、1ポイント=100円分のカフェテリアポイント(令和4年度は220ポイント)が付与されるので、ポイントを利用して教育・育児、健康保持・介護など日々の生活を支えるサービスからオフタイムを充実させる魅力的な商品との交換が可能です。

*1入職初年度は最大2日。
*2所定の入居要件を満たした方に限ります。
*3職員厚生会が運営する職員専用駐車場の利用には、規約により定められた駐車場代が必要です。

認定士・学会について

基本的には自己研鑽としています。施設要件などの体外循環認定士や、告知研修費用などは補助されます。近畿圏内の講習会についても補助されます。学会についても、演題発表者の補助もあります。

臨床工学技士の進路としての魅力を教えてください

生命維持管理装置の操作、点検、保守をする仕事です。
機械いじりが好きじゃないとできない業務だと思われるかもしれませんが、どちらかというと臨床側のお仕事です。
臨床の現場で医師や看護師とのチーム医療で、一緒に考えて治療していく業務で非常にやりがいのある仕事だと思います。集中治療分野も楽しいということを広めていきたいと思います。
病気をどう治していくかの監督者は医師ですが、医療機器をどう使えば、最適な治療ができるかというのは私たちが提案していけるのでやりがいのある仕事です。患者さんが元気になっていただけるのは私たちにとっても嬉しいことです。

 

取材協力

堺市立総合医療センター 診療支援部門臨床工学科
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