【臨床工学技士国家試験と進路、将来編】臨床工学技士が語る!私が臨床工学技士を目指した理由

私は、臨床工学技士としての17年間勤務していますが、臨床工学技士を目指したきっかけについて前回の続きをお話しさせていただきます。今回は私が臨床工学技士として就職してから現在に至るまでの経緯についてです。国家試験に無事合格し、臨床工学技士養成校をに卒業しましたが、どの分野で働くか決められず悩んでおり、実は卒業後も就職先が決まっていない状態でした。その一方で、養成校の仲間たちは国家試験前には就職先が決まっていたり、次々と就職先が決まっていく中、自分だけが就職先が決まらないことにとても焦りを感じていました。

就職先が決まらなかった理由は、給与のことで葛藤していたからです。臨床工学技士の業務は人工心肺(OP室)業務か透析業務など色々ありますが、初任給を考えた時、透析施設で働く方が給与が高い傾向にあります。そのため、透析関連施設に就職したい反面、透析業務などを専門として仕事した場合、その後人工心肺業務など他分野に転職したいと考えたときに転職しづらくなるのではないかという思いもあり、なかなか進む分野を決められずにいました。そんな時、養成校の先生から「迷っているなら、循環(人工心肺)からやってみて、自分に合わないと思えば代謝(透析)に行けばいい」とアドバイスをもらい、人工心肺業務を主に行っている病院へ、就職することに決めました。他の仲間よりも、だいぶ遅れての就職となってしまいましたが、無事就職することができ、ようやく臨床工学技士としての人生が始まりました。

忙しく充実した日々。仕事に対するモチベーションとは?

就職したものの、臨床工学技士の仕事内容は患者の命がかかっている仕事のため、毎日が緊張の連続でした。緊急手術で夜中にOPが終わり帰宅し、そのまま病院に泊まり、翌日帰宅せず仕事になるなど、忙しい日々でしたが、その分、毎日新しい知識を学ぶことができ、充実した日々を送ることができました。忙しい毎日に耐えることができたのも、手術室の一体感がとても好きで楽しかったからです。一体感とは、一人の患者さんのために他職種が一つとなって手術を成功させるために協力している雰囲気のことです。

心臓手術の際、心臓外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士が連携して手術を行い、それぞれが患者さん一人のために集中して仕事をしています。これは医療に限ったことではありませんが、一つのことをみんなで作り上げて達成した時の達成感は、ひとりで達成した時よりも喜びが大きいです。私は手術が終わるたびに、この達成感を感じることで仕事のモチベーションにしていました。その他の仕事内容としては、急性血液浄化の業務をすることもあり、色々な分野の知識と技術を得ることができ、臨床工学技士としての仕事の幅が増えていきました。

色々な業務をこなす日々の中で、気付くと、一つ楽しみができていました。それは血液浄化業務のときに患者さんと会話することでした。なぜ、楽しみだったかというと、人工心肺業務では患者さんとお話する機会はほとんどなく、患者さんと会話できる環境がとても新鮮に感じていたからです。何より、臨床工学技士の存在を患者さんに知ってもらえることがとても嬉しく思いました。もっと患者さんとの関わりが深い仕事環境を求め、入職してから2年経った頃に透析業務に転職することを決め、転職しましたが、透析業務での患者さんとの関わり方は思っていたよりもずっと難しく、大変な業務だなと感じました。急性血液浄化と違い、血液透析は1週間に3回も患者さんと顔を合わせるためスタッフとの距離がとても近く、急性血液浄化では、このように頻繁に顔を合わせることはありません。透析業務を円滑に行うためには、患者さんとの信頼関係が大事で、コミュニケーション能力が非常に重要だと感じます。信頼関係ができるまで穿刺を断られたり、色々と精神的にきつい時期もありましたが、サポートしてくれるスタッフや患者さんの存在もあり、少しずつ周りの患者さんとの信頼関係も築けていきました。経験年数が長くなるにつれ、患者さんから頼られるようになり、ようやく認められたと感じることができ、とても嬉しかったことを覚えています。

臨床工学技士としての将来

透析の仕事に従事してから5年が経った頃、このまま透析を専門として臨床工学技士を続けていくか、それとも違う分野にチャレンジするか悩み始めていました。せっかく臨床工学技士という多種多様な分野で仕事ができる資格を持っているのに、このまま透析だけしか経験できないのは、もったいないと感じたからです。今度はME機器管理など、経験したことのない分野での環境を求めて転職活動を始め、透析の技術を生かしながら新しい分野にチャレンジできる病院へと転職しました。この病院が現在勤めている病院ですが、ここでは人工呼吸器やペースメーカー、眼科OPなど、今まで経験したことがない仕事が多く、たくさんの新しい知識を学ぶことができ、臨床工学技士としての仕事の幅をさらに増やすことができました。最後になりますが、臨床工学技士は様々な分野で仕事ができる、とてもやりがいのある職種です。今でも仕事のフィールドは拡大しており、これからも医療現場からの臨床工学技士に対するニーズは高まると思います。今後も臨床工学技士として色々な分野で他職種と関わりながら、新しいことにチャレンジしていきたいと考えています。