現役臨床工学技士が解説!臨床工学技士の仕事のひとつ。無菌室勤務で行うことはこんな仕事です

臨床工学技士は、病院内の多くのところで活躍するようになりました。そのうちの一つが無菌室です。以前は、滅菌業務を看護助手が行っていましたが、医療機器の普及に伴い、臨床工学技士の無菌室での勤務も増えてきました。今回は、無菌室での臨床工学技士の仕事内容について説明していきます。

無菌室で行われる滅菌方法とその違いとは

簡単に無菌室での業務を説明すると、滅菌装置を使用して医療機器や医療器材を滅菌することです。ここで滅菌されるものは、手術で使用された機器が多く、使用後に次の患者さんが、安全に使用できるように滅菌管理します。

手順としては、まず洗浄と消毒を行うことから始まります。手術で使用した、医療機器に異常や破損がないことを目視で確認し、洗浄を行います。洗浄中に、医療機器を破損する危険性もあるため、注意して行う必要があります。洗浄された後の機器は、洗浄後に滅菌を行います。この滅菌の前には再度、異常や破損がないことを確認し、点検を行います。この点検は滅菌する機器によって異なりますが、電気メスの場合は、導通試験などを行うこともあります。その後、滅菌されるのですが、滅菌方法には、高圧蒸気滅菌、酸化エチレンガス滅菌、過酸化水素ガス低温プラズマ滅菌、放射線滅菌があります。これらは、医療機器によって滅菌方法が異なるので、1つずつ紹介します。高圧蒸気滅菌は、121℃で20分間滅菌する方法と132℃で20分間滅菌する方法があります。これは、高温で滅菌されるため、主に耐熱性のある機器が対象となります。この滅菌は、浸潤状態で行われることで、確実に滅菌でき、残留ガスも存在しないため、安全に滅菌することが可能です。高熱で滅菌する方法としては、この他に乾熱滅菌があります。この方法は高圧蒸気滅菌とは異なり、乾燥した状態で行われます。そのため、高圧蒸気滅菌よりも高い温度で滅菌する必要があり、180℃で60分間滅菌する方法と200℃で30分間滅菌する方法があります。これは、浸潤状態となることができない耐熱性のある機器が滅菌手段として使用されます。次に、酸化エチレンガス滅菌ですが、50~60℃で4~6時間滅菌します。

この滅菌に使用される酸化エチレンガスが、エチレンオキサイドガスという名称でもあるため、EOGと略されることもあり、この滅菌方法もEOG滅菌と呼ばれることがあります。酸化エチレンガスは沸点が10.8℃と低く、可燃性のガスであることから非常に危険なガスですが、滅菌作用が強く、滅菌業務においては非常に有効です。また、温度が低くても、滅菌できることから、耐熱性のないプラスチック製の機材やゴム類の機材で使われます。しかし、この酸化エチレンガスは滅菌後に残留毒素があるため、ガスを取り除く作業も必要となるため、正しい知識を持った臨床工学技士が業務を、遂行する必要があります。次に、過酸化水素ガス低温プラズマ滅菌ですが、45℃で30~40分間滅菌します。過酸化水素ガスは残留毒素が存在しないため、酸化エチレンガスと比べ、安全に使用できます。この滅菌は過酸化水素ガスを高真空化で、プラズマ化させることによって生じる反応を用いて滅菌を行っています。また、この滅菌方法は湿度の低い環境での滅菌が可能となるため精密機器などの滅菌にも使用可能となります。最後は、放射線滅菌ですがガンマ線、電子線、X線を用いたものがあります。この中でもガンマ線を用いた滅菌が最も行われています。放射線を用いた滅菌は浸透性が優れているため、包装した状態でも滅菌可能となるため、非常に有効ですが、放射線は人体にも影響をきたすため、取り扱いには注意が必要です。

滅菌方法の注意点

以上が、一般的に無菌室で行われている滅菌方法です。この他に、ろ過滅菌火炎滅菌などがありますので、興味がある方は調べてみてください。なお、これら滅菌の目的は無菌性保証レベルに達することですが、どの滅菌方法でも、この基準を満たせるため、滅菌する機材によって使い分ける必要があります。これらの滅菌方法によって、滅菌された機器は次の手術の際に使用されるため、包装を行い、いつでも出せるように保管しておく必要があります。では実際滅菌される機器にはどのようなものがあるのでしょうか。滅菌される機器は主に手術で使用されることが多いです。

その中でも、除細動器や電気メスがあり、特に電気メスはほぼ毎回使用されるため、そのたびに、滅菌を行います。また、滅菌は行わないのですが内視鏡を洗浄することもあります。内視鏡は、非常に高価であるため、専門的な知識を持つ臨床工学技士が洗浄するのが適しています。医療機器を滅菌するという機会は、ほとんどないと思いますが、患者さんに直接使用した機材全般が滅菌の対象となるため、この滅菌業務によって手術が円滑に行うことができるため、臨床工学技士として活躍が期待される現場の一つです。まだまだ無菌室での業務は、行っている病院は少ないですが、興味を持っていただけると幸いです。