臨床工学技士の業務の中には、手術室での業務があります。この業務は主に手術室で使用される医療機器全般の管理をします。また、生命維持管理装置である人工心肺装置を用いた心臓手術を行う際に操作を行います。これら2つが手術室での主な業務となるのですが、業務を行うにあたり、必要な資格は特にありません。しかし、手術関連専門臨床工学技士の資格や体外循環技術認定士の資格を持っておくことは推奨されます。今回は、手術室での業務と役立つ資格についてご紹介します。
手術室業務で役立つ資格とは
専門臨床工学技士
一つ目は、手術室業務のメイン業務である手術室で使用される機器の管理についてです。この業務を行う際には手術関連専門臨床工学技士の資格が推奨されます。この資格は日本臨床工学技士会のJACE学術機構が認定している専門臨床工学技士の1つです。資格取得の条件としては指定講習会の参加や当該領域の実務経験5年以上などが必要となります。手術室で使用される医療機器の管理ですが、この機器には麻酔器や除細動器、内視鏡装置、ESWL、電気メス、輸液ポンプ、シリンジポンプ、モニター、人工心肺装置があげられます。これらの手術機器の中から当日の施術で使用される機器は事前に準備しておきます。麻酔器や除細動器、電気メス、モニターなどは特に使用頻度が高いです。手術室で管理している機器は病院によっても様々あり、担当の先生の移行によって変化する場合も多々あるので、勤務先によって変動してきます。これらの医療機器の管理はもちろんですがこのほかにも手術室全般の管理も行っています。例えば手術室で使用されるガス配管の管理や電気設備、空調の管理も行っています。このように手術室で安全に手術が行われるように、機器や設備の点検を日々行っています。これらの業務を遂行するにあたって必要な資格はありませんが、専門的な知識を身に着けた臨床工学技士が必要となるので手術室で勤務する際には専門臨床工学技士となることを目指しましょう。
体外循環技術認定士
二つ目は、臨床工学技士の花形ともいわれる、人工心肺業務についてです。先ほどの手術室業務は手術が安全に施行されるための管理がメイン業務となるため、手術中に臨床工学技士がメインで何かをすることはなく、あくまで補助程度の業務となります。しかし、人工心肺業務に関しては実際に人工心肺装置を操作し、心臓のコントロールを行うことで心臓手術を進めていくことができるため、心臓手術を行うにあたって臨床工学技士の存在は必要不可欠です。この業務を行う際は体外循環技術認定士の資格が推奨されます。この資格は日本人工臓器学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本体外循環医学会の4学会が認定する資格で、経験年数は3年以上必要です。また、30症例以上の体外循環の操作経験がある必要があります。では人工心肺業務とはどのようなものなのか順を追って説明していきます。まずは心臓手術がある際に人工心肺装置の準備を行います。
装置の準備は回路の組み立てからプライミングまでを行います。手術開始後は心臓手術を始める準備が整うまでは待機しており、始まった際の準備をここでしておきます。準備が整うと患者さんの心臓と回路を接続していき、体外循環を始めていきます。体外循環が始まってからは適時血液ガス測定を行っていき、患者さんの血行動態を確認していきます。体外循環の準備が整うと心臓を安全に停止させるために心筋保護液を注入していきます。注入後心臓が停止したことを確認すると心臓手術の準備が完了し、医師が処置を行います。その間患者さんの心臓の代わりを機械で完全に行うため、少しのミスも許されない緊張が続きます。この際に患者さんの状態に異常が生じた場合に薬剤の投与や吸引なども行います。処置が完了した後は徐々に離脱していき、患者さん自身が心臓で血液を循環できれば手術は終了となります。この人工心肺業務は少しのミスで命にかかわるため、高い知識量と技術が求められます。それを証明するという意味でも体外循環認定士の資格を取得しておくことは重要です。
まとめ
上記の業務に共通して言えることは、業務を行う上で資格は不要であるが持っておく方がいいということです。特に、人工心肺装置を用いた業務は高い知識が必要となるため、資格の取得は重要となってきます。しかし、臨床工学技士の国家資格があれば業務を行うことは可能なため、手術室で勤務を行いたいと思った方はぜひ臨床工学技士を目指してみましょう。魅力としてはやはり医師、看護師以外に手術室に活躍の場があるのは臨床工学技士だけだからです。確かに放射線技師や臨床検査技師も手術に関わってきます。しかし、手術現場で手術中に常にその場にいる必要があるのは臨床工学技士だけです。さらに心臓手術の際には必須となるため、手術現場での貢献度は非常に高いです。臨床工学技士として手術現場で活躍していき、手術を安全かつ円滑に行うことができる環境を整えていきましょう。