名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
愛知県災害拠点病院の指定を受けている名古屋市立東部医療センターは、2021年4月に名古屋市立西部医療センターとともに名古屋市立大学に移管され名古屋市立大学医学部附属東部医療センターと改称した。心臓血管センターおよび脳血管センターを設置し、高度専門医療を実施。内科、外科系とも救急患者の受け入れ体制を整えている。
第二種感染症指定医療機関として、新型コロナウイルス感染症を名古屋市内では1番、愛知県下で2番目に多く受け入れている。
臨床工学室の藤井久人(ふじい・ひさと)係長と、森野暁大(もりの・あきひろ)主査にお話を伺った。
森野暁大 主査(左)・藤井久人 係長(右)
臨床工学室の概要について
藤井 係長
当院には19名の臨床工学技士が在籍しています。2名が育休中で、17名体制です。年齢構成では、20代が約半数を占め、30代が4割、40代が1割程度となっています。
業務内容は機器管理と臨床、教育が主軸です。医療機器は5,000台ほどの台数を中央管理しています。
教育は院内の機器等に関すること、インストラクターの資格を持つスタッフによるBLS※やICLS※の実習や講義、臨床では手術室、集中治療、ER、血液浄化、心臓カテーテル、CIEDs※、呼吸関連、内視鏡に従事しています。
※BLS:Basic Life Supportの略(心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置)
※ICLS:Immediate Cardiac Life Supportの略(日本救急医学会が開催している蘇生教育コース)
※CIEDs:Cardiac Implantable Electronic Devicesの略(心臓植え込み型電気的デバイス)
Q.勤務体系などについても教えてください
8時45分から17時15分までとなっていますが、業務セクションに即した形で、勤務体系を細かく変えていく予定です。
当直は月3回程度、オンコールは月10日程度です。残業時間の削減を大学全体として取り組んでいて、効率の良い働き方を指導しています。残業時間は平均で月30時間を下回っています。
Q.新人の育成についてはどのように進められていますか
今年、新人が入職しましたが、第一目標は当直に入れるようになることです。ローテーションで、主要な業務を経験しているところです。当院の特徴として緊急対応に対する意識が常にあり、重要になってくるのは、心臓カテーテルとICU、オペ室の3本柱。それらのスキルも身につけます。個人のスキルに合わせながら育成は進めますが、理想は1年で独り立ちすることです。
2年目以降は、習熟度が足りないところや1年目でこなせなかった業務内容について、レベルアップを図っていきます。”業務ラダー”を導入し、業務内容の習熟度を数値化して指導者と上司が確認しながら独り立ちできるように教育指導しています。
Q.どのような経緯で現在のポジションに就かれたのですか?
私はもともと臨床検査技師になろうと3年間学びましたが、臨床工学技士の方に興味を持ったため、臨床工学専攻コースへ編入し資格を取りました。卒業後は名古屋と関西の施設で主に血液浄化や集中治療を中心に従事しながら仕事のイロハを学びました。
その後、名古屋市立大学のMEセンター開設時に委託職員として入職して1年半ほど、立ち上げ業務に携わりました。
その後、名古屋市立大学の職員として採用され、現在に至ります。2022年4月に東部医療センターに異動しました。
Q.この20年間で臨床工学技士の存在感が高まったと感じられていますか?
私自身、大所帯のCE(Clinical Engineering:臨床工学技士)の施設で知名度、実績ともに豊富な環境で過ごしてきましたが、名市大の入職当初は本当に人が少なくて、3人のCEで毎日院内を駆けずり回りながら過ごしたのを思い出します。当時、院内のCEの知名度も皆無でギャップに愕然とすることもありました。小児体外循環業務が主な業務だったこともあり、体外循環を覚えつつ、他の業務もこなしました。
院内でCEの必要性の下地を作りながら2009年にようやく、臨床工学部門が独立し、役職のポジションもできました。少しずつ人員も増え業務拡大していきました。
東部医療センターのアピールポイント
急性期を手がけている病院ですし、臨床工学技士が携われる範囲の業務はほとんど網羅している施設です。これからCEを目指す学生にとっては、当院では一通りの業務内容に従事できるので、入職されるメリットは大きいと考えます。
これまで当院は、さまざまな業務を立ち上げ、いわゆる専任制をとってきました。各分野でハイレベルなスペシャリストが専任していますので、大きい魅力だと思います。
現在は業務ローテーションを念頭に置きつつ、改革を行っているところです。東部医療センターは大学に附属したスケールメリットを生かし、人事交流なども含めて、必要に応じて施設間で長・短期の異動を交えていく計画です。
希望者の大学院への進学も可能です。
名市大のCEのあり方を当院でも取り入れる考えですが、スペシャリストになりすぎると、院内で周りの業務に手が回らなくなってしまいます。スペシャリストの存在は重要ですが、一通り業務をこなし、専門性を持った人材も育成しようと考えています。
臨床工学技士という職業を知ったきっかけ
森野 主査
私が最初にこの仕事を知ったのは、たまたま自宅の近くに専門学校があり、体験会が開かれていて、そこに行ったのがきっかけです。もともと機械いじりは嫌いな方ではありませんでしたが、すごく好きという訳でもなかったのです。
当時は看護師や、理学療法士、臨床検査技師などと比べて、臨床工学技士の認知度はあまり高くなかった印象です。体験会では第一線で働いていた先輩の言葉が印象に残っています。それは、「病院で働くということは患者の命に関わるということであり、臨床工学技士は医療機器を扱うことを通じて、患者様の命に触れることができる」と熱心に伝えてくれたことです。医療機器を扱いつつ患者のことも見ることができる、というところに大きな魅力を感じました。もともと人の役に立つ仕事に就きたいという思いが強かったこともあり、臨床工学技士の道を志しました。
Q.森野主査のキャリアについても教えて頂けますか
2004年に富山県にある病院に1年ほど勤め、そこから実家のある愛知県に帰ってきました。その後別の医療施設を経て、旧東市民病院(名古屋市立東部医療センターの前身)に先輩に誘われる形でパート(アルバイト)として雇われました。
私が入職した当初は、病院として急性期に力を入れ始めていた頃で、心臓カテーテル検査や、治療などの虚血関連業務に積極的に取り組む日々を送っていました。その1、2年後に心臓血管外科を立ち上げることになりました。
心臓血管外科立ち上がり当初は、CEが4人しか在籍していなかったため、人工心肺装置業務、心臓カテーテル業務、血液浄化業務等、緊急症例も多く、日々の寝る時間も少なく多忙を極めていました。徐々にCEスタッフが増え、その後、アブレーション業務の立ち上げに参画することとなり、医師と共に他院へアブレーションの研修へ行き、最初は一人でアブレーション業務に従事していました。また同時期に心臓植え込みデバイス関連業務にも携わる機会が増え、デバイス関連業務ではデバイス患者専用相談窓口「ハートダイヤル」の運用や患者向けBLS講習会など全国的に先駆けた取り組みに従事し病院機能評価においても高い評価を受けることにつながりました。数年前からは臨床工学室副室長として係のマネジメント業務にも携わり現在は、名古屋市立大学病院の組織再編に伴う緑市民病院法人化に向けた医療機器整備専任者とし従事しながら東部医療センターと緑市民病院の2つの病院の仕事に従事しています。
1日のスケジュール(東部医療センターに勤務する場合)
5:00 起床
7:00 出勤
7:45頃 病院着
定時は、8:45~17:15
8:45 始業
メールの確認や返信、主査業務(緑市民病院関連業務)の確認と1日のスケージュールチェック。
アブレーションが1日複数件あれば、夕方まで従事。
その他、打ち合わせや緑市民病院の資料作成など。
17:15 終業
といったスケジュールになります。
仕事のやりがい
医療機器を通して患者さんの様態が改善したり、患者さんやご家族に安心や満足といったものを感じてもらえる時が一番やりがいを感じます。医療機器の向こう側の患者さん、ご家族に喜んで頂けた時が、自分にとって「この仕事をやっていて良かった」と思う瞬間です。
臨床工学技士を目指す若い人たちにメッセージ
なかなか臨床工学技士のイメージが湧かない人もいるかもしれません。私もそうでしたが臨床工学技士になるまでに様々な不安や、迷いがあるかもしれません。そんな時は最初のなりたいな、やってみたいなと思った気持ちを大切にしてください。夢や、目標に到達するためには「なりたい気持ち」を強く持つことが大切です。そして、行動を起こしましょう。
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター 臨床工学室
〒464-8547 愛知県名古屋市千種区若水1丁目2-23 Tel.052-721-7171
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