【臨床工学技士インタビュー】『生命の尊厳』を重んじ、常に病める人の声に耳を傾け癒すことを理念に半世紀にわたり培ってきた医療のノウハウを地域に還元。業務拡大に対応できる人材を柔軟に育てていく。強固な横のつながりはあらゆる症例に対応できるという患者への安心安全へつながっていた[聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院]

聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院

1987年(昭和62年)に創立した聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院は、急性期総合病院としてまた、神奈川県の3次救急医療機関として地域の医療を支えている。聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院には、25の診療科に518の病床があり、クリニカルエンジニア部には15名(女性7名)の臨床工学技士が所属している。今回は、クリニカルエンジニア部所属の臨床工学技士、櫻井薫(さくらい・かおる)主任に話を聞いた。

櫻井主任

Q.臨床工学技士を目指したきっかけは?

埼玉県出身で地元の高校を卒業後、東京都内の大学に進学して臨床工学技士の資格を取得しました。親族に医療職が多いということもあり、医療系の道に進もうと思っていました。中学生のときに祖父が人工血管手術を受けました。そのときに初めて人工心肺という器械をみて、臨床工学技士という職業があることを知りました。

Q.聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院を選んだ理由は?

臨床工学技士を目指すきっかけになった心臓血管外科があることと、当院では3次救急もやっていますので、様々な部門が揃っているという点が大きいです。大学の先生や臨床工学技士の先輩方にお話を聞く機会があり色々アドバイスをもらうなかで、総合的なことをやっている病院ということで選びました。入職してすぐは業務をこなしていくのに必死でした。私が臨床工学技士として働きはじめてからどんどん業務の幅が拡がっていき、授業でやっていないことや知らなかった分野にまで業務が及ぶようになりました。現在、私が力を注いでいる分野も授業では習っていません(笑)

Q.現在はどのような業務をしているのですか?

聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院のクリニカルエンジニア部では、責任者として各業務の窓口は設けていますが、業務を専任にしていません。大きくわけて、血液浄化業務、手術室業務、カテーテル室業務、機器管理業務・救命の業務があります。私は、循環器の不整脈業務といってペースメーカーの植え込みや管理、アブレーションの治療などをメインで担当しています。学生時代は授業ではそこまで触れられないような分野でしたが、実際にやってみるとすごくやりがいを感じています。

業務拡大と人材育成

Q.不整脈治療に力を注ぐきっかけがあったのですか?

2015年にアブレーション業務、ペースメーカー業務もその少し前に立ち上げました。聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院としてはまだまだ開拓中の業務ですが、2015年に70例だった症例数が去年2021年には230例と年々増えています。これまで少人数で業務を行ってきましたが、症例数も増えましたので臨床工学技士の人材も育てていかなくてはいけないということになりました。業務を整えて人を育てるというのは、自分の勉強不足を実感する良い機会にもなっています。

Q.どんな時にやりがいを感じますか?

ペースメーカーの設定を考えて調整し、患者さんから調子が良いといわれると心からよかったなと感じますね。これまでにいらっしゃったのは、40代の女性で水泳やバレーボールなどよく運動をなさる方でした。数字だけではある程度のところまでしか設定できませんので、リハビリ室で実際に動いてもらい調整していきます。私たちがこれくらいの数値だからこうだろうと思っていても、実際の感じ方は大きく異なることもあるようで先生とディスカッションしながら設定していきます。その人の生活リズムや習慣によって設定が変わるのですごく大変ですが、難しい分やりがいを感じますね。

Q.入職するとどのような研修を行いますか?

新人で入職すると各部署を数か月ずつローテーションしていき、約1年間をかけて業務を覚えてもらいます。血液浄化の基本的な対応や機器トラブルなどの緊急対応はもちろん、手術中に神経の伝達度をみるのですが波形に変化がある場合に、医師にそれを伝えるモニタリング対応など徐々に重要なこともできるよう実践を積んでいきます。2年目からは、オンコール業務も担当してもらい、さらに本格的な業務習得を目指します。業務が曜日ごとに流動的で固定化されていませんので、柔軟性のある臨床工学技士へと育っているように感じています。

1日のスケジュール

櫻井主任のある日のスケジュール
定時8:00~16:30

7:30 出勤
アブレーション業務の準備
8:15 クリニカルエンジニア部での始業ミーティング
8:45 カテーテル室でのミーティング
9:00 患者さん入室、手術開始
13:00 休憩(昼食など)1時間、進行状況による
14:00~ カテーテル室 ペースメーカー植込み業務 片づけなど
16:15~ クリニカルエンジニア部での終業ミーティング
16:30 終業

月の残業時間は、20~30時間程度。オンコールは、毎日2人体制で月5~6回程度当番がまわってくる。

ECMOが足りない

Q.聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院には、複数の系列病院がありますが他病院との連携はありますか?

4つの系列病院があります。人事異動で人の行き来もありますし、器械の貸し借りといったこともあります。

Q.器械の貸し借りとはどのような場合にあったのですか?

コロナの感染者が異常に増えた時期にECMO(エクモ=対外式膜型人工肺)の台数が当院で足りなくなることがありました。その際、本院である聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市)から借りました。基本的には、私たちも使える器械なので人はついて来ないのですが、ECMOを導入した際に当院ではあまりない症例を扱うことがありました。そのときは、聖マリアンナ医科大学病院の方から器械だけでなく、臨床工学技士を含めた救命のスタッフも応援に来てくれました。あとは、聖マリアンナ医科大学病院でECMOの研修があり、みんなで順番に行っていました。データの見方や設定の方法や症状に合わせた運用の仕方、さらにはECMOと呼吸器などの関連する機器を同時につける場合の注意点など細かい部分までケアしてもらいました。

Q.しっかり連携が取れているのですね?

そうですね。定期的に4病院の技士長会議を開催して情報交換もしています。現場レベルでも分からないことがあった場合には、電話で気軽に問い合わせることができる関係性が築けています。やはり、系列病院ということもありますので仲間意識も強いですね。

地域連携は地域還元

横浜市から依頼で、定期的に人工呼吸器の操作や管理について聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院の臨床工学技士を講師として派遣しています。周辺地域の病院の看護師などの他職種に向けて開催されるもので、ここ数年毎年開催されています。当院だけでは診ることができる患者さんの数は限られますが、講習会などを通じて技術を地域に還元することが医療の底上げにつながります。こうやって地域全体で救うことができる患者さんを増やしていくということも大切な活動のひとつだと思っています。

求める人材

何事にも興味を持って取り組める向上心のある人が望ましいですね。興味を持てるということは疑問も湧いてくるのでさらなる成長へとつながります。加えて、医師や看護師と折り合いをつけないといけない場面もありますから、コミュニケーションがしっかり取れるということも重要になります。聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院のクリニカルエンジニア部では、新人技士になるべく臨床の現場で実践を積んで成長してもらいたいと思っています。安心して経験を積むことができるよう私たちがしっかりバックアップしていきますので、やる気のある人と一緒に働きたいですね。

 

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