【臨床工学技士の研修業務って何?どんな事を行うの?研修業務を徹底解説

病院で勤務する際には、院内スタッフの知識をつける目的で研修が月に何度か行われます。この研修には当然医療機器や医療ガスの研修もあり、この研修の際には臨床工学技士が主となって行われます。今回は研修業務でどんな事をするのか説明します。

研修の目的とタイミングとは?

臨床工学技士の研修業務の目的は院内で主に医療機器を操作する看護師が適切に機器を扱うことができることです。この研修を行うタイミングは様々あり、新しい機器が入ってきた時や医療事故が発生したときや1年に1回などの定期的に行われます。機器は生命維持管理装置などの臨床工学技士が基本的に操作を行うものの研修というよりも、輸液ポンプやパルスオキシメータなどの院内で看護師が使用する頻度が高いものが中心に行われていきます。もちろん生命維持管理装置である人工呼吸器の説明を行うこともありますが、その際は詳しい操作方法の説明というよりも人工鼻やカニューレの交換時期の説明などが多いです。しかし、病院によっては呼吸器の設定も看護師が変更している場合があるのでその際は研修する必要性があります。最近、私が実際に研修を行ったのは新たに院内に導入した酸素ボンベの残量を検知してくれる酸素残量アラートです。この機器は他病院で酸素投与中の患者さんを搬送中に酸素ボンベの元栓を開けていなくて酸素が流れていなかったというアクシデントが発生したことを受けての導入となりました。研修の際にはまずこの機器を導入するきっかけを説明し、この機器の使用目的を認識してもらいます。つぎにこの機器の使用方法を説明するのですが、新規導入の場合は特に重点的に説明します。この機器の場合は、使用前に毎回テストを行いアラームが作動することを確認してから使用する必要があるため、実際に使用してもらい操作方法を認知してもらうことで一連の研修は終了します。新しい機器が入ってきた場合はこのような形で終了となり、この後は看護師から再度研修の依頼があった場合や1年に1回程度行う場合があります。また、医療事故が発生した場合にも行われることがあるのですが、この場合は操作方法や使用目的よりも発生原因と対策の説明が重点的に行われます。この原因を研修でしっかりと説明できるように事前に検証を行うこともあります。研修の目的は医療事故を起こさないようにするためのものですので新規導入や定期開催の研修の際にしっかりと説明していくことが重要です。

また、医療機器のほかには医療ガスについての研修も行っています。院内の医療ガスも臨床工学技士で管理しており、医療ガス全般を安全に使用できるように研修を行っています。この研修では医療ガスの中でも特に使用頻度の高い、酸素を中心に説明する場合が多いです。酸素には患者さんの酸素投与に用いられることはもちろんなのですが、その危険性や何色のボンベなのかなど、基本的な内容を説明することが多いです。このような形で臨床工学技士が院内で研修を行う場合は医療機器についてのものか、医療ガスについてのものかの2パターンになります。

現在の研修業務の問題点

ここまで研修業務で、どんな事をするのかを説明してきました。では、どのような形で研修を行っているのかというと、コロナ前までは対面で行っていました。なぜなら実際の機器を用いながら説明できるため効率がよく、操作方法が適切かの判断もこちら側で確認することができるからです。しかし、コロナが蔓延してからは集団で集まって研修を行うことは困難となっており、研修が原因となり院内でクラスターが発生してしまえば元も子もありません。そこで、現在はZoomなどのオンラインサービスを用いた研修やパワーポイントなどの資料を提供し、閲覧してもらうという形の研修が主流となっています。どちらの場合も直接研修を行うよりも準備に時間がかかってしまう点と研修自体をきちんと見ていない可能性があるという点の2つのデメリットがあります。1つ目の準備に時間がかかってしまうことはまだいいのですが、研修自体をきちんと見ない場合は主目的である医療事故の防止が困難となってしまいます。特にパワーポイントではこの傾向が多くあり、いつでも資料を確認することができるというメリットがありますが、デメリットの方がはるかに大きいというのが現状です。この状況を打破するためには研修を受ける一人一人が高い意識をもって受けることが重要ですので、この危機感をうまく持たせることが研修成功への鍵になると考えています。

今回説明した業務は、医療機器を管理する臨床工学技士として重要な業務の一つであると思います。なぜなら、医療機器を適切に操作し、いつでも安全に操作できるようにメンテナンスを行っている我々が院内での事故防止に努めることに大きな意味があります。医療機器についての医療事故は医療機器の増加に伴い増加傾向にあります。そのため、臨床工学技士として院内全体で医療機器が関する医療事故は0にできるように研修を通して行っていきましょう。